路線バスの旅 後編

 今回は五島バス旅後編です。バス旅前編(2020年11月)記事では、福江島のほぼ半分の路線を回るコースをご紹介しましたが、今回はあと半分の路線を制覇できるコースをご紹介します。
 令和2年11月にダイヤが改定され、前編よりもバスの本数が大幅に削減されたため、今回は出発が早朝。しかもかなりタイトなスケジュールになっていますが、「早起きは三文の徳」。観光ツアーでは見られない、島の隅々に残された手つかずの大自然を堪能できる、かなりお得な癒し旅にご案内します。
 まだ薄暗い静かな港。海の向こうに神々しい朝日が見え始めた頃、やってきた向小浦(むこうこうら)行きのバスに乗り込んだら、整理券を抜き取り、運転手さんに1日乗車券を持参していることを告げましょう。車窓からの視界を広く取るために、できるだけ前方の窓側に座って下さいね。
 ※向小浦を往復できる便は、13時発もありますので、季節や都合に合わせお選びください。

●1日フリー乗車券販売窓口(五島市外在住の方、観光のお客様のみ利用可能)
・五島バス観光課(福江港ターミナル内)
 住所:東浜町2丁目3–1
 営業時間(8:30~17:30)
 電話:0959–72–2173


 7時13分、福江港を出発。商店街を通り抜けたら、国道384号線に合流し、変わった名前のバス停「馬責馬場(うませんばば)」の交差点を直進。まっすぐなゆるい上り坂を進んだら左折。その後五島中央病院を経由して県道27号線に合流し、岐宿町方面へ。「鳴木場(なるこば)」からは自由乗降区間ですが、朝早い路線なので乗客はほとんどおらず、バス停はどんどん通過されて行きます。
 猪掛トンネルを抜けたら景色は一変。民家が点在する山間の道を進み、田んぼに挟まれたとても長い直線道路を走り抜けたら、時刻はだいたい7時45分。乗り換えのため「二本楠(にほんぐす)」バス停で一旦停車し、すぐに玉之浦方面へ向け出発します。
 途中、県道164号線へ路線を変え、折口トンネルを抜けたら「上の平口(かみのひらぐち)」から枝道に入り、田園風景が広がる静かな集落、上の平地区を往復します。元の県道に戻ると、次に「幾久山(いつくやま)」。上の平と幾久山は豊富な清流や昼夜の寒暖差に恵まれた良質な米どころで、国内最大の米食味コンテストで金賞も獲得しています。機会があれば食べてみてくださいね。
 「幾久山(いつくやま)」を過ぎると、ホタルやアユの遡上が見られる清流、中須川沿いを下り中須集落。国道384 号線に合流し、中川トンネルを抜けたら目の前に玉之浦湾が広がります。一旦国道を離れ左折し、左手の玉之浦小中学校を見ながら静かな里山、小川集落を往復。この地区を流れる清流小川川では、今でもシロウオ漁が行われていたり、ホタルも見ることができます。
 国道に戻ったら玉之浦湾沿いの美しい景色を見ながらくねくね道を進みます。坂を上りきったら「立谷口(たちやぐち)」から大宝集落へ。西の高野山と言われる「大宝寺」のある集落です。ここで一旦小休止をするのですが、狭い敷地での、大型バスの旋回は見ものです。このタイミングで、左側に座るのがおすすめです。
 その後8時20分に再出発し、県道50号線に入り左折。この辺りでは、田んぼが海と道路に挟まれた珍しい景色を見ることができます。長い玉之浦トンネルを抜けたら左手には井持浦(いもちうら)教会堂。明治32年に日本で初めて建設されたルルドがある教会堂です。乗降客がいなければ一瞬で通過してしまうのでお見逃しなく。観光スポット、大瀬崎灯台への登り口も素通りしますが、バスの運転手さん曰く、ここで下車し、歩いて灯台を見に行く観光客もいらっしゃるとか。

 玉之浦湾沿いをしばらく行くと小さな港町に到着。市役所玉之浦支所や郵便局がある玉之浦地区の中心地です。港には漁船が停泊し、トンビが優雅に飛んでいる懐かしい感じのする小さな町です。左手には民家に紛れて建っている玉之浦教会堂。遠目から十字架が見えるので要チェックです。朝早い下りの便なので、ほとんどのバス停は素通りして行きます。
 小高い丘を越えると現れる、再びの港町「小浦(こうら)」。なぜかここには外壁をピンクや紫に塗った可愛い民家が点在しますが、運転手さんも理由はわからないとか。バスは停まりませんが、もう少し奥に行くと、島民からも人気のある「小浦海水浴場」があります。白い砂浜の波の静かなこの海では、予約をすればカヌー体験も楽しめます。また近くには、県指定の天然記念物の巨木「玉之浦のアコウ」もありますので、レンタカー等で行かれた際にはぜひ立ち寄ってみて下さいね。「小浦」バス停で小休止の後は、向小浦に向け出発します。

<カヌー体験 五島市商工会玉之浦支所>
住 所 :〒853-0492 長崎県五島市玉之浦町玉之浦638
電話番号:0959-87-2032
体験料金:1回 大人5000円・子供3000円
営業時間:9:30~16:30
体験期間:4月~10月
所要時間:約2時間
アクセス:福江港・福江空港より車で1時間
備 考 :※基本3日前までの予約が必要です。
※1回の受入人数:1名~36名 
 「小浦」バス停を出発したら玉之浦大橋を渡り島山島へ。8時46分、終点「向小浦(むこうこうら)」到着です。五島列島の大小150余りある島の中で10番目に大きいとされる島山島ですが、ほとんど開拓されておらず、向小浦にしか集落はありません。目の前の対岸には小浦集落が見えていますが、平成6年に橋がかかるまでは船でしか渡れませんでした。人口は最新の情報で17名ですが、人口より遥かに多い700頭もの野生の九州鹿が生息していると言われています。バス停から歩いていける向小浦園地では、運がよければ鹿の姿を見ることができるかもしれません。
 バスは15分ほど停車するので、一旦降りて海辺で一休み。漁船の並ぶ静かな漁港にはトンビの声だけが響き、透明度の高い海水に鮮明に見える、ゆらゆらと泳ぐ魚。朝の澄んだ空気と心地よい潮風に、心も体も癒されます。
 9時1分、「向小浦」バス停始発に乗車。「二本楠」までは来た時と全く同じ道を戻りますが、方向が逆なので、また違った景色や見逃した箇所をゆっくり眺めることができます。市街地に向かう上りの便なので、乗客もポツポツと増え始めます。
 始発からぴったり 1 時間、10時1分に「二本楠」バス停に到着です。運転さんに別れを告げ、ここで待ってくれている、富江行きのバスに乗り換えます。
 10時3分に発車したバスは県道31号線を少し戻り、「三叉路(さんさろ)」バス停から細い山道へ入ります。車がやっとすれ違える程の道幅の峠は、かなりの運転技術が必要ですが、前半は上り、後半は下りの坂道を縦横無尽に操るハンドルさばきは見ものです。時々ちらりと海や平地が見えますが木々が深いので、ここは山の景色をしっかり楽しみましょう。
 下りきった先の目の前には海。三叉路を右折したら海沿いの平坦な道を進み、富江の町に入ります。交差点で国道384号線を少し進み、狭い路地に入り富江支所前を通過したら、10時27分、終点富江に到着です。
 富江バス停にはレトロな待合所があり、トイレも完備。福江行きのバスが出るまで30分ほどあるので、ひと休みしたら近場を散策。時間的に遠くへはいけませんが、すぐ近くに商店街があり、ケーキ屋さん、八百屋さん、肉屋さんなどが軒を連ねているので、ふらっと歩いてみるのも楽しいですよ。
 また、富江小学校のグラウンドにあるアコウの木も見ごたえがあります。高さ15m、幹周りが6mの迫力満点の木ですが、アコウ特有のおどろおどろしい感じが無く、遠目にみると大きいブロッコリーみたいで可愛い木です。
 小腹が空いていたら、肉屋さんで売っている揚げたてコロッケを食べながら、アコウの木陰で一息つくのもいいかもしれません。富江の見どころスポットは、過去のしま旅記事でもをたくさん紹介してるのでぜひチェックしてみて下さいね。
 11時ちょうどに出発する、待機していた福江行きのバスに乗り込みます。今回は、右側座席に座るのがおすすめ。
 国道384号線に出たら、途中までは来た道を戻り左折。富江漁港と大海原を右手に見ながら、県道49号線を福江方向へ進みます。海の向こうには福江島のシンボル「鬼岳」。富江側から海越しに見る鬼岳もまた格好いいです。
 グランピング施設や人気のパン屋さんがある田尾を通り抜け、福江島で一番長い、902mもある増田トンネルを抜けたら「香珠子(こうじゅし)」、「大浜(おおはま)」と美しい砂浜のあるエリアを進みます。
 左手には合宿免許で人気の五島自動車学校。右手の砂浜の先には、バスの乗車地だった富江の町が見えます。ここから内陸部に路線を変え、市街地方面に向かいます。
 バス旅前編(2020年11月)でも通った野々切町、本山、大円寺と進み、三尾野でいったん国道に合流。再び県道49号線に入り、商店街を抜けて11時30分、福江港に到着です。
 次に向かうは奥浦方面。一番早い便でも1時間後なので、福江ターミナルでちょっと休憩。港内で昼食をとってもいいですし、今のうちにお土産品を決めておくのもいいですね。インフォメーションセンターにはレアな観光スタンプが置いてあるので、旅の記念にいかがでしょうか。過去のしま旅(2019年9月)で福江港も紹介しているのでチェックしてみて下さいね。
 12時20分くらいになったらバスの乗り場に向かいます。やって来た樫ノ浦(かしのうら)行きのバスに乗り込み、12時30分に出発です。今回は右側席に座るのがおすすめ。文化会館の前から商店街に入り、新栄通りから県道162号線へ。福江中学校辺りを過ぎると民家が少なくなりどんどん山側の道へ入ります。
 その昔、大村から潜伏キリシタンが上陸したと言われる「六方(むかた)」を通り、奥浦地区へ。浦頭教会堂の入り口からさらに細い山道に入り、しばらく行くと視界がひらけ奥浦湾が目の前に。マグロの養殖イカダとその奥の対岸には堂崎教会堂が小さく見えます。湾沿いに更に奥へ進むと、県の天然記念物「樫ノ浦アコウ」がある小さな港町、樫ノ浦に12時48分、到着です。
 漁港の一番奥にある「廻り場(まわりば)」というバス停でUターン。すぐに来た道を戻ります。浦頭教会堂の前から県道162号線に再度合流し右折。一旦県道を離れ、奥浦小中学校前の細い道路に入ります。過去のしま旅(2020年8月)で紹介した「栄林寺」や「ねこたまshop&cafe」の前を通り、再び県道へ合流したら、静かな奥浦湾沿いを走り抜けて行きます。
 久賀行きのフェリー乗り場や堂崎天主堂入り口を横目に進み、真っ赤な戸岐大橋を渡ったら小さな漁港、戸岐集落へ。エメラルドグリーンの海がとても綺麗。Uターンしたら県道に戻り更に奥地へ。静かな入江を見ながら進み、右手奥の宮原教会堂を一瞬眺め、こんなとこにバス停が?というくらい細い坂を少し登ったら、終点「観音平(かんのんびら)」があります。
 このまま山道を奥に進み、峠を越えたら半泊集落に行けますよ。機会があれば是非行ってみて欲しい、癒される場所です。バスは山肌ギリギリに停車し、少し待機したら13時11分に発車。来た道を通り、13時50分、福江港へ到着です。
 着陸体勢の飛行機がちょうど見れる時間かも。プロペラ機のブオーンという音が聞こえたら、上空を見上げてみてください。
 時刻は昼過ぎ。早起きしたのでもうひと遊びできますね。海に囲まれた福江島のバスは、海沿いや入江を縫うように走る路線が多く、内陸も手つかずの自然が溢れているので、癒しバス旅絶対おすすめですよ。