路線バスの旅 前編
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五島バス
福江島で唯一の路線バスである「五島バス」。誰もがどこかで見かけるこのバスは、毎日島の隅々を縫うように走っていて、買い物や通院、通学など、島民の日々の暮らしに、なくてはならない存在です。また島民の移動を楽にするばかりでなく、観光で来られた方の移動手段としても活躍しています。
観光メインなら2名以上の申し込みで運行してくれる「定期観光バス」がおすすめ。午前と午後でコースが選べ、1日で島の主要観光スポットをガイド付きで巡ってくれます。また、一人で自由に島内散策をしたい方におすすめなのは、島民以外が使える1日フリー乗車券を使っての自由旅。たったの1,000円(小人500円)で、何度乗り換えてもOKなので、時刻表を片手に自分好みのルートを探す旅も面白いですよ。平日の早朝や夕方は、学生で満席の場合もあるので、それ以外の時間帯をおすすめします。観光地を巡るルートにはない道路からは、島の暮らしの息づかいが肌で感じられ、バスの車窓から見える景色に感動すること間違いなし!またドライバー泣かせの道を縦横無尽に操る運転技術もなかなかの見応えがありますよ。
今回はこの1日フリー乗車券で島の約半分を巡る、弾丸路線バスの旅(前編)をご紹介します!
●1日フリー乗車券販売窓口、定期観光バス予約
・五島バス観光課(福江港ターミナル内)
住所:東浜町2丁目3–1
営業時間(9:00~17:00)
電話:0959–72–2173
※一日フリー乗車券は「カンパーナホテル」「GOTO TSUBAKI HOTEL」の受付にて24時間購入可能です。
福江-野々切-鐙瀬
福江港始発、鐙瀬(あぶんぜ)行きのバスに乗り込んだら、五島バス旅の始まりです。
港を出ると、早々から歴史的建造物を要チェック。右手海側に見えるのは170年も前から変わらぬ姿で佇む立派な石垣の常灯鼻です。その昔、灯台の役目として、港に入る船を見守ってきました。その後バスは商店街など、福江の中心市街地を通り抜けていきます。
交番のある三尾野交差点を左折すると左手には大円寺。五島に於ける曹洞宗の本山であり、五島藩歴代藩主の菩提寺です。右手の川べりに沿うように進んだ先には見事な田園風景が広がります。遠く竹林の中にポツンと見えるのは日本遺産の明星院です。(明星院前バス停からお寺まで300mくらいなので、歩いて行けます。)
そこからしばらく進み、野々切バス停を過ぎる頃見えてくるのが島のシンボル「鬼岳」。どんどん迫ってくる感じに胸が高鳴ります。大窄バス停辺りの民家と鬼岳のコラボは圧巻です。
海沿いの道に出ると、大海原の向こうに二次離島の黒島。キラキラと美しく光る海と鬼岳を堪能していると、鐙瀬バス停に到着です。
鐙瀬-崎山-福江
鐙瀬から崎山集落へ続く海沿いの道をしばらく行くと目の前に「箕岳(みたけ)」が現れます。麓付近には桜が満開になる園地があり、春には花見客で賑わいます。左手には変わらず鬼岳。麓に広がる畑の土は火山の噴出物からなるため、色は赤茶色でサラサラしていて、じゃがいもなどの栽培に適しています。時間によっては畑作業している姿が見られるかも知れません。
一旦海沿いの道から崎山集落に入り、民家の続く狭い道路をしばらく進みます。道沿いに、いくつもの石垣を見ることができますが、これは福江にお城があった頃の名残で、今も大事に管理され多く残されている地域の一つです。
崎山小中学校を過ぎると、また海沿いの道へ。海上にポツンと立つのは、日本初の洋上風力発電。(この道沿いの景色は、「海遊びと東半島ドライブコース」でも紹介しているので、合わせてお読みください。)迫力の大海原を堪能したら、このまま中心地へと向かいます。運良く信号で停まれば石田城の立派な石垣をしばらく眺め、終点の福江港に到着です。
福江-岐宿
福江港に着いたら、一旦下車。次の出発まで、船の出入りを眺めたりお土産物を見たりして過ごします。近くに、歩いていけるドラッグストアやスーパーもあるので、飲み物の補充をしたり、港公園でゆっくりしてもいいかも知れません。
港ターミナル前の始発バス停で待っていると、三井楽行きのバスがやって来ます。バスに乗り込んだら、途中までは先ほど乗ったバスと同じ路線を進むので、見逃した景色をチェックできます。
三尾野交差点をまっすぐ進み、商業施設の立ち並ぶ直線をしばらく行くと、馬責馬場(うませんばば)バス停。福江島にはこのような変わった読み方のバス停がたくさんあります。この交差点を左折し、福江島最大の総合病院、五島中央病院を経由。大型スーパーやドラッグストアを最後に景色は変わり、どんどん山道へ入って行きます。どこを向いても全てが山里の風景。空の青と相まって、澄んだ空気が流れているのが見て取れます。
三井楽半島バス
三井楽に着いたら、近場を散策するのも楽しいですが、すぐ近くの三井楽タクシーが運行しているコミュニティバス、「三井楽半島バス」に乗ってみるのもおすすめ。五島バスと連絡しているので終点で降りれば乗り継げるようになっていますが、万が一のこともあるので、1つ2つ手前のバス停で降りておくと乗り遅れもなく安心です。
三井楽半島バスは、路線バスが運行しない集落に住む方が、三井楽診療所への通院に利用したり、福江行きの路線バスに乗り継げるよう、毎日運行しています。
今回乗ったのは三井楽循環コース。診療所や役場前を通ったら、嶽、柏、高崎を回り、戻って来ます。海岸線を沿うように走るので車窓からの景色が抜群。嵯峨島や姫島が目の前に見えたり、三井楽特有の赤土の円畑(まるはた)や、三井楽教会、高崎公園に高崎海岸など、観光としても充分に楽しめる三井楽半島バス。このバスを利用して、高崎公園にピクニックに来られる観光客もいらっしゃるそう。運転手さんとの会話も弾み、あっという間に終点に到着です。
〈三井楽タクシー〉
住所:五島市三井楽町濱ノ畔938
電話:0959–84-3136
三井楽-岐宿-二本楠
福江行きのバスに乗ったら、川原までは来た道を戻ります。神崎橋から憩坂を経由せずまっすぐ進むと左手には五島南高校とその前に広がる田園風景。キラキラした白石湾沿いに進み、川原浦トンネルを抜けると右手高台に白亜の水ノ浦教会。再び岐宿の集落へ。(岐宿の観光スポット、魚津ヶ崎公園へは「魚津ヶ崎公園前」で降り歩いて10分ほどで到着。)
岐宿バス停で一旦下車。富江行きのバスに乗り換えます。(このバスは福江行きなのでそのまま乗っていれば福江港まで行きます。)同じバス停で待っているとやってくる富江行きのバスに乗車。先ほど通った楠原集落を再び通り山内方面へ。次第に広がる田園風景とその先に見える七ツ岳。7つの峰からなるこの山は、標高432mで福江島で2番目に高い山。その昔、噴火によって形成された湖だったと言われる山内盆地には、周囲の山並みから豊富な水が流れ込み、美味しい米が採れることで有名です。山や田畑に見とれていると、二本楠バス停に到着。このまま乗っていれば富江に行けますが、今回は一旦降りて、荒川行きのバスに乗り換えます。ここは乗り換えターミナルになっていて、待合所とトイレがあります。
二本楠-荒川-丹奈
荒川行きに乗り換えたら、来た道を少し戻り信号を左折。山間のゆるい上り坂を上がった右手には、先ほど遠くに見た七ツ岳の登山口。(七ツ岳の登山口は2ヶ所あり、もう1ヶ所はこれから行く荒川地区の七嶽神社の先にあります。)ここからはカーブの多い下り坂が続きます。橋の両脇に立つ立派な看板の「歓迎」文字のお出迎えを受け、、温泉の町、荒川に到着です。
荒川バス停の横には足湯ができるスペースも。昭和な街並みの残る荒川は、古き良き時代にタイムトリップしたかのよう。静かな荒川港で、バスは一旦停車しますが、お客さんがいれば丹奈集落へ行き、またここに戻って来て、福江に向かい発車します。今回丹奈方面へも行ってみました。(丹奈行きのバスに乗らず、荒川の街並みを散策したり足湯をしてもOK。)荒川トンネル、丹奈岬トンネルを抜け左折したら、静かな港町、丹奈に到着。5分程停車するのでバスから降り、小さな港町の空気を感じてみて下さい。すぐにまた荒川に向けて発車します。
荒川-福江
荒川に着いたら数分停車するので、ベンチに座り停泊している船をボーッと眺めたりできます。ここから見える夕焼けは美しいと島内でも評判。近くにゲストハウスや民宿もあるので、泊まりがけで来るのもおすすめですよ。発車し、来た道を戻ります。上り坂なのでゆっくりと進み、さっきは気づかなかった外の景色をゆっくりと眺められます。両脇は桜並木。春は桜が舞い散り綺麗です。
七ツ岳登山口、一軒家バス停を過ぎたら見えて来る長い直線道路は県道27号線。長崎県で2番目に長い道路です。二本楠を経由したら民家の無い山間の道路をしばらく進みます。左手に見え隠れする川が途切れると雨通宿(うとじゅく)。猪掛(いかけ)トンネルを抜けたら中心地に入っていきます。左手に島民の多くが利用する大型スーパーが見えたら、また五島中央病院を経由し、国道384号線と合流し下りの直線へ。馬責馬場、商店街を抜けて、終点福江港へ到着です。今回は、福江島のほぼ半分の路線をコンプリートできるコースをご紹介しましたが、次回はあと半分を制覇できるコースをご紹介しますのでお楽しみに!